劇場版 キノの旅 the Beautiful World 病気の国−For You−


 普通に30分の続編ですが、キノが旅してる設定を知らなくても分かるかな。荒野とドーム、二つの異なる顔を持つ国に例によって3日間滞在するキノとエルメス。病床の少女イナーシャ川澄綾子、吉田さん@『シャナ』の代わりに出番多いです)に旅の話をして欲しいと両親に頼まれる。外の世界に憧れるイナーシャには、会ってお礼を言いたい人が居る。開拓団として外の世界に居るその少年:ローグに彼女の彫った鳥のブローチ配達というお使いイベント。時間で青空から夕焼けに映像が描き換わる天井を持つドームの内側に鳥はおらず、自由の象徴なのだろう。「鳥を見ると人は旅に出たくなるんだって」「素敵な言葉ですね」。白いエントランスで、消毒薬のツンとした匂いのする街は、TV電話を多用したりするのも無機質なイメージで全体が病院として機能してるのかも知れない。『GUNSLINGER GIRL』とかもそうだが、後味の悪さも健在で、考えさせられる話です。
 「調子の乗って、高速で〜」って、クラッチは転倒したから壊れたんだよ! 外の世界、(ローグが育てている)憧れの農場のトマト柄パジャマなイナーシャは痛々しい。冒頭の彫刻刀で切って指に血玉が出来る白い部屋/赤い血のコントラストも印象に残る。出会い回想でのローグのセリフをイナーシャがキノに喋るため、彼の声を一度も聞かせない演出もすごいと思った。病人の希望である特効薬が健康なローグを含めた人体実験の成果なのは皮肉なもので、そういう意味で病気の国(病院で研究室)なんだろう。「それは、あなた宛です」と、鳥のブローチを置いていくキノも人が悪い。(ローグの代筆しているコール中尉の)「長い話をしよう」という手紙を受け取ったイナーシャは、ローグが死んでいることは知っていたのかなー。